音響

【初歩の音響講座】コンデンサーマイクなら音が良い!はウソ!?

今日から不定期ですが、「初歩の音響講座」を開催します。
ミキシングエンジニアで生計を立てている旦那ぽんとしては、本業の分野です。
今日は、音の入り口である「マイクロフォン」の話です。

マイクロフォンの役割

マイクロフォン(以降、マイクと略します)の役割は『音を拾う』ことです。
皆さんが普段聞いている「音」は空気の振動(気圧変化)です。

音は、空気中で物体が振動することによって発生します。
皆さんが会話する際に発する「声」も、喉にある声帯を振動させて音を発生させ、口の形を変えて「言葉」として空気中に発しているのです。
ちなみに、この振動が空気中を伝わる速度は、1秒間に340メートルの速さ(秒速340メートル)と言われています(気圧や湿度によって、この数値は変化します)。
話しを戻しますが、口から出た声は、周囲の空気を振動させて伝わっていきます。
やがて、他の人の耳に到達すると耳の奥にある「鼓膜」を振動させますから、「音が聞こえた」と認識されるわけです。

マイクにも、人間の鼓膜に当たる部品が取り付けられており、空気の振動を受けて振動することにより『音を電気に換える』という働きをします。
ですから、マイクに繋いだコードは、マイクで作られた電気をミキサーやアンプに運ぶための電線ということなのです。

ダイナミックマイクとコンデンサーマイク

ちょっとオーディオに詳しい人なら、マイクにはダイナミックマイクとコンデンサーマイクがあることを知っていると思います。
両者の違いは、音を電気に換える方法です。

ダイナミックマイクは磁石とコイルで発電する発電機と同じ原理で音を拾いますが、コンデンサーマイクは電子部品のコンデンサー(電気を溜める部品)の性質を利用して音を拾います。
それぞれのマイクには個性があるので、プロの音響スタッフは用途に応じて使い分けています。
では、それぞれの特徴をあげてみましょう。

ダイナミックマイクの特徴

頑丈で、多少の衝撃では壊れません。
うっかり、落としてもセーフな場合が多いです。
吹かれやポップノイズ(口を近づけてパピプペポと発音したときに、マイクが発するボコボコといったノイズ)にも強いです。
価格も安価で、プロが使うマイクでも2万円程度から販売されています。
電源も要らないので、コードをつなげばすぐに使う事ができます。
しかし、構造上の問題で、コンデンサーマイクより高音域の追従性は劣ります。

コンデンサーマイクの特徴

高音域までキレイに拾う事ができるので、楽器全般に使用することができます。
しかし、吹かれやポップノイズに弱いので、風圧が強い音源にはウインドスクリーンやポップフィルターなどの防風対策が必要になります。

又、コンデンサーの電気を溜める性質を利用しているので、ファンタム電源(+48Vの直流)が必要になります(乾電池が使えるタイプもアリ)。
マイクの構造も複雑で部品も多い為、落下などの衝撃で壊れることが多々あります。
更に、湿気に弱いので、使用後はデシケーター(乾燥機)に入れて保管しておく必要があります。
何より、ダイナミックマイクと比較して高価な点が一番のデメリットです。
通常、プロが使用するコンデンサーマイクは安い物でも7~8万円、レコーディングスタジオで歌を録音するマイクは30~40万円もします。
このように、コンデンサーマイクは「音は良いけれど面倒くさいマイク」と言えるのです。

コンデンサーマイクなら何でも音が良いというのは間違い!!

アマチュアの人が陥る間違いのひとつに「コンデンサーマイクはダイナミックマイクよりも音が良い」ということがあります。
そんなことを偉そうに語っている私も、中高生の頃はそうでした。

当時は、自宅で楽器を演奏してはカセットテープに録音する「宅録」にハマっていました。
オーディオに詳しい友人に色々と教わりながら、ミキサーやらマイクスタンドなど、音響機器のカタログを見てはアルバイトに励んでいました。
マイクは従兄からもらった安物を使っていましたが、オーディオ教授君に「そんなマイク或る日、オーディオ教授君にマイクを買いたいと相談したところ「ダイナミックマイクよりもコンデンサーマイクのほうが良い音だぞ」と勧められて、ソニーのECMシリーズ(当時3万円くらい)を買いました。

その時は、やっと手に入れた憧れのコンデンサーマイクだったので「音が良い」と頑なに信じていましたが、本音は「何かカシャカシャした音だな」と感じていました。
でも、そんなことオーディオ教授君に言うと、「何言ってんだよ!耳がどうかしてんじゃないの?」とバカにされそうだったので、ひたすら沈黙していました。

この仕事に就いてから聞き比べたことがあるのですが、キンキンした音で全くダメダメでした。
今思えば、SHURE(シュアー:海外製)のダイナミックマイクの方が全然良い音ですし、安いショップを探せば1万円以下で買えるので、本当にもったいないことをしたと思います。
まあ、その頃に今のような知識はなかったので、仕方がありませんが・・・

宅録でお勧めのマイクは?

予算が数十万円もあれば、断然、ノイマンやAKGのコンデンサーマイクをお勧めします。
しかし、自宅で録音する場合に、あまり好感度なマイクを使うと不要な生活音まで拾ってしまうので、スタジオのように遮音設備が充実していなければ、その性能は発揮できません。
ですから、自宅で録音する場合は、ダイナミックマイクのほうが良いと思います。
楽器にも使える万能マイクなら、SHUREのSM57やBETA57がお勧めです。

但し、歌を録音する場合は、マイクと口をくっつけてはいけません。
又、音量が小さい場合は、ヘッドアンプを使うと解決しますよ。