昨日はレスポールとストラトの違いについて説明しました。
両者の違いは、ピックアップとスケールだけではありません。
ストラトキャスター最大の武器
ストラトに有ってレスポールにないものとは!?
それは、トレモロユニットです。
L字に曲げられた金属棒をブリッジに装着(ネジ式固定)することによって、ブリッジを稼動させてビブラート効果を得るシステムです。
ブリッジをボディに取り付けているネジを支点に、ブリッジが起き上がる仕組みになっていて、金属棒(トレモロアーム)をボディ方向へ押し下げると、弦のテンションが弱くなり音程が下がるというものです。
ブリッジの下部分は数本のバネが取り付けられ、片方をボディに固定することでトレモロユニットが通常の位置に戻るように引っ張っています。
このように、トレモロアームを操作することでビブラート効果を狙ったユニットが『シンクロナイズド・トレモロユニット』で、このブリッジはレスポールには取り付けられません。
でも、なぜ「ビブラートユニット」ではなく「トレモロユニット」なのでしょうか?
ギターでトレモロと言うと、マンドリンのように細かくピッキングを繰り返す奏法のことなのですが・・・
いまだに、疑問です。
トレモロユニットは諸刃の剣!?
トレモロユニットは誰でも間単に使うことができますが、うまく使うためには調整が大変です。
なぜならば、可動式のブリッジ部分は、ボディの裏面に取り付けられたスプリングで、弦の張力とは逆方向へ引っ張っているからです。
このバネのおかげで、アームダウンしたブリッジが瞬時に元の位置に戻ることができるのです。
このトレモロユニットですが、ブリッジが浮き上がるギリギリの強さにバネを引っ張っておくのがベストコンディションなのです。
つまり、
弦の張力 = バネの張力
ということです。
弦の張力が強いと、ブリッジが浮き上がって弦高も高くなってしまいます。
バネの力が強いと、ブリッジを固定する力が強すぎて、アームを動かすのに力が必要になります。
ですから、アームを使う場合は、弦を張りかえるたびにボディ裏のバネを調整する必要がありますので、裏蓋を外している人が多いです。
ここまで苦労して調整しても、ナットやストリングスガイドの摩擦やペグの精度によってはチューニングが狂う事がありますので、それらの問題を解決するために『フロイトローズ』などのように、弦を挟み込んでロックするシステムも市販されています。
それでも、演奏中に弦が切れてしまえば張力のバランスが乱れてしまうので、チューニングはメロメロに狂ってしまいます。
ですから、トレモロユニットは『諸刃の剣』なのです。
初心者は使わない方が無難
このように、細かいメンテナンスや調整が必要なトレモロユニットですから、初心者の人は自分の手で調整することができるようになるまでは、使わない方が良いと思います。
世界的な名プレイヤーと呼ばれる人でさえもアームを使わない人は多く、弦が切れてもチューニングが狂わないように、裏のバネを目一杯締め込んでいる人や、ブリッジとボディの間に木片を詰め込んでブリッジを固定している人もいます。
ブルースギターの名手であるエリック・クラプトン氏のストラトは、木片で固定されているそうです。
又、私のギター師匠であるサイモン&ガーファンクルのポール・サイモン氏に至っては、リペアマンの手によってブリッジの穴を埋めてしまっています。
このように、アーム奏法をしないギタリストにとっては、ストラトのトレモロユニットは邪魔な存在なのです。
ですから、アームを使わない人や使い方を知らない人は、弦が切れてもチューニングが狂わないように、ボディ裏のバネを全部はめてしっかり締め込んでおくことをお勧めします。
同様に、初心者の人がエレキギターを買う際には、フロイトローズのようなチューニングロックシステムが付いたギターは絶対に避けた方が良いことを付け加えて、本日の講座を終わります。