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【ヘッドフォン】プロの機材は本当に良いのか?都市伝説に迫る!

ちょっとオーディオに詳しい人は「プロが使っているんだから良い物」「レコーディングスタジオで使われているのだから間違いない」という言葉を口にします。
今日は、その真偽についてお話しします。

プロの現場で使われているヘッドフォンとスピーカー

レコーディングスタジオでスタンダードなヘッドフォンと言うと、SONYのMDR-CD900STです。
テレビやPVでレコーディングスタジオの風景が映し出されると、ほぼ100%の確率で、このヘッドフォンが使われています。
その事から、初歩のオーディオマニアは「900STをチョイスすれば間違いない」という結論に達するのです。

モニタースピーカーも同様です。
レコーディングスタジオには、メインモニターとサブモニターの2セットのスピーカーが常設されています。
そのサブモニターとして使われているスピーカーが「YAMAHAのNS-10」という小型のスピーカーです。
1980年代から世界中のレコーディングスタジオに常備されるほどスタンダードなスピーカーで、海外アーティストのレコーディング風景でも頻繁に見ることができます。
残念ながら、現在は廃盤となっているために中古を探すしかありませんが、それでもamazonなどで販売されている名機です。

プロの機材は耐久性重視

皆さんが気になる一番のポイントだと思います。
プロの使っている機材、レコーディングスタジオで使われている機材は『良い音』がするのか?ということについて、プロのミキシングエンジニアがお答えします。

確かに、音の入り口であるマイクロフォンは、最低でも1万円~数十万円しますので、それなりに良い物と言えます。
しかし、プロの機材で重要視されることは『耐久性』です。
そのため、家電製品のように色々な機能が付いているものは嫌われます。
例えば、音声信号を増幅する(この場合、音を大きくすると考えて良いです)アンプについては、電源スイッチとボリュームしかありません。
もっと、シンプルなアンプは電源スイッチしかないものもあります。

家電製品の場合は、電源のON・OFF時にスピーカーを保護するための保護回路やBASS(低音)・TREBLE(高音)などのトーンコントロール、CDやAUXなど複数のインプットを切り替える回路など多機能なものが多いですが、プロの機材にはそれらは一切付いていません。
でも、価格は家電よりも10倍以上する製品が多いです。
その要因は、精度が高く耐久性がある部品を使っているからです。
プロの機材は家電よりも使用時間が長いです。
ですから、家電並みの耐久性では、すぐに壊れてしまうので仕事に支障がでてしまいます。

プロの機材は本当に音が良いのか?

プロとアマでは「良い音」の定義が違います。
まず、一般的な(アマチュアの)良い音について解説します。
ファッションに流行があるように、音にも流行があります。
最近の傾向は、ダンスやヒップホップにみられるような「低音」です。
ですから、オーディオメーカーも「いかに迫力ある重低音を出すか」ということをテーマにスピーカーやヘッドフォンを開発しています。
言い換えると、このような開発は「カッコ良い低音が出るように音を加工する」という意図に基づくものです。

これに対して、プロの良い音は、「加工しない音が聞こえること」が大前提です。
プロの仕事は、スピーカーの音を聞いて、ミキサーやエフェクターを駆使して「カッコイイ音」を作ることなのですから、「良いも悪いも有りのままの音」を聴くことが最優先なのです。
つまり、モニタースピーカーから出ている音が「ショボければショボい」とハッキリ聞こることで、どこを操作すれば良いかを判断するわけですから、家電のように、ショボくてもそれなりに良い音で聞こえるように加工された音だと、逆に仕事ができないのです。

このように、プロとアマでは「良い音」の概念が違いますから、「レコーディングスタジオで使っているから良い音」というのは間違いです!!

プロのスタンダード機材が選ばれる理由

第一の理由は、「同じ音でモニターする」ということです。
どういうことかと言いますと、レコーディングスタジオに設置されている機材は、それぞれのスタジオで異なります。
スピーカーが違えば、同じ音でも聞こえ方が変わってしまいます。
ですから、レコーディングやミキシングをしているスタジオで100%満足できる楽曲ができても、別のスタジオで聴いたら「そうでもなかった」ということは多いのです。

そこで頼りになるのが、どのスタジオでも共通して置かれているスピーカーやヘッドフォンなのです。
仮にイマイチな鳴りのスピーカーやヘッドフォンであっても、同じ再生装置ならば一定の判断基準になりますから、NS-10や900STが重宝がられるのです。

第2の理由は、スタジオでモニターしている音量は、一般家庭で音楽を聴くよりも遥かに大きいです。
家庭用のスピーカーやヘッドフォンは家庭で聴くのに丁度よく設計されていますから、レコーディングスタジオで使うと、音が割れたりボンボンとスピーカーの箱が共鳴したりして、キチンと鳴ってくれないことがあります。
ヘッドフォンも、スピーカー部分がビリビリと鳴って、まともに聞こえない場合が多いです。
この点を念頭に「大音量でも音が暴れない」という意図で設計されたものが900STであり、NS-10なのです。

結論

このように、レコーディングスタジオで使われているスピーカーやヘッドフォンは、良い音よりは頑丈であることが選択理由です。
つまり、これらは作業用のアイテムと考えた方が正解です。
ですから、皆さんが言う「良い音」とは根本が違うのです。
そのような意図でこれらをチョイスすると「あれ?こんなはずでは・・」とがっかりすると思います。

ちなみに、私も両方とも所有していますが、普段はスピーカーで音楽は聞きませんし、ヘッドフォンは、オディオテクニカ社の

(アートモニターシリーズ)を愛用しています。
コチラの方が、900STよりも圧倒的に「良い音」で鳴ってくれます。